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スペインでチームを率いる19-20(2) 
選手の適正ポジションを見極める 〜開幕までに急いでやるべきこと〜

ダノクでの生活に少しずつ慣れてきました。

家から練習場までほとんど意識せず運転できるようになりました。

選手のことが少しずつわかってきました。

施設の管理人のおっちゃんのキャラがわかってきました。

各選手のピッチ外の様子も少しずつ見えてきました。

彼らの親御さんが誰なのかわかってきました。

チーム内の人間関係も少しずつ見えてきました。

そしてスタッフ間のチームワーク・信頼関係も順調に深まってきています。今回の記事ではチームを立ち上げてから最初に着手するべきことについて記してみようと思います。

それはできるだけ監督として「最初から色を塗らない」ということでした。真っ白のキャンバスを各選手に用意し、まずは選手達に自由に色を塗ってもらう。指導者である自分達の絵の具箱は閉じて、代わりに鉛筆くらいを握ってるくらいのイメージでしょうか。何が言いたいかというと、できるだけ指導しないということを心がけました。その分各選手の得意なプレーを知るというところに時間とエネルギーを注ぎました。なぜなら最初からこちら側が指導してしまうと、選手はそれを意識する余り本来の良さが見え辛くなってしまうことがあるからです。まずは選手の素の状態を知りたい。選手の中に溢れる才能ができるだけ外に出やすい環境を作ってあげるということを心がけました。

「じゃぁお前は指導者として何も要求しないのか。」と言われるともちろん要求しています。ただそれは守備面です。相手がボールを持っている時にどんなことを選手達には知っていて欲しいのかは最初の段階から比較的多く取り組めることできます。攻撃面の方も厳しい口調でトレーニング中は声は出しています。ただそれは指導しているというよりは、その瞬間瞬間の各選手のいいプレーを実況しているというイメージです。何故そのプレーがいいのかについて解説も加えます。ただ何かを強く要求したりすることは一切しません。自チームがボールを持っている時にその選手が何をするのか。どこにどんなタイミングでどんなスピードでボールを要求するのか。もしくはどんなタイミングでどんなスピードでスペースを作るのか。その時、何を見ているのか。ボールを持つ前と後に何をするのか。ボールを持っている最中は何をするのか。身のこなし、ボール扱い、キックの種類、非利き足の精度。落下点は読めるのか。ボディプロテクトは知っているのか。単純な移動スピードは。etc

トレーニングや試合を通じて各選手をじっくり観察します。時には選手のことをよく知る人たちからも情報をもらいます。ここには注意しなければいけません。あくまで情報としてもらうということ。勿論その情報も何らかの経験・事実に基づいて成されたものなので、価値あるものだと思います。ただ一番大事なのは自分の目を通じて入ってくること。そして一緒にチームを創るスタッフからのコメントも参考にします。そういう意味で最初の一ヶ月は兎に角大変です。毎日が発見の連続だからです。いえ、連続?どころではありませんね。その大量の発見に呑み込まれ溺れてしまいそうになります。練習も試合も撮影したビデオで見返さないと情報処理が追いつきません。選手各自をより知るために。そこではライブでは見切れなかった沢山のお宝が転がっています。それをスタッフと一緒に共有していきます。「この選手のこれ見てたか?すごいな笑!」という具合に。

そういった各選手の才能というのは、見えやすいものもあれば見えづらいものもあります。注視していないと簡単に見逃してしまうこともあります。それは一瞬光ってすぐに見えなくなってしまう流れ星のようなものです。例えばこんなケースがありました。クラブからはある右利きの選手を「中盤の選手だ」と紹介されていました。関係者に言わせるとこの選手は線が細くなかなか厳しいだろうと言われていた選手です。まずはそのポジションで何度かプレーしてもらいます。「確かに一番手になれるとは言い難いかも知れない。如何せん視野が広くない。」「念のため、右サイドハーフでもプレーしてもらおう。お、中盤の時よりはいいかな。」「サイドバックのポジションが空いているからそこならできるかな。、、違うな。」と色々な場所に本人を配置し、彼の才能が垣間見える瞬間を待ちます。そんな中、彼の良さはどうやらサッカー眼。ボールさばき。緩急を上手く使ったドリブル。耐久性だとということが見えてきました。そんな中、左サイドハーフで使ってみた時のこと。それらの彼の良さがいつも以上に発揮されました。まるで別の選手のようでした。それから彼は左サイドハーフの選手として計算することになりました。これがわかるまでには1ヶ月はかかりました。そしてこの手の作業を選手の人数分行わなければいけないのですからとても時間と労力がかかります。

そんなプレシーズンというのは猶予期間のようなもの。結果をある程度軽視して色んなことを試すことができる幻のような時間です。この5週間が終わり、公式戦が始まってしまうと、試すことへの制限が一気に強くなります。そこからは一個人の成長をクラブ全体の結果より優先することはできません。それまでに選手が一番イキイキ、自身の良さが一番出るポジションをある程度確定させる。その為には、早まる気持ちをグッと抑え、指導しないことも大事だと思います。

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