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スペインでチームを率いる19-20(3) 育成年代の選手に出場機会を提供する為に

皆さんこんにちは、岡崎です。日本のサッカー現場は今、当にシーズンのクライマックスを迎えている頃ですね。来季の人事についても動きが活発になるタイミングかと思います。

 僕の方はリーグが開幕して試合を5試合を消化しました。成績は2勝2敗1分けの中位。まじまじと年上と戦うリーグの洗礼を受けています。直近の試合では強い雨でピッチに水溜りがあった為両チームダイレクトプレーを余儀なくされた状態で試合をすることになりました。当に力勝負とはこのこと。ある意味判断をせずに相手の背後めがけてプレーしなければいけないこの試合で、フィジカルで勝る年上チームに大苦戦。最後ギリギリで追いついて何とか勝ち点1を拾って家に帰りました。5試合とも勝っても負けておかしくないギリギリの戦いばかりでした。去年は同世代の公式戦でバスク準優勝の成績を納めた自チームの選手達。エリートと呼ばれてきた彼らは今年「なんかこれまでの年と全然違う」と身を以て感じているはずです。ただ一番頭を悩ませているものは相手のレベルやリーグといった外的要素ではありません。もっと内的なもの。「出場機会の提供」です。

 クラブから最も求められるのは結果です。勿論直接は言われませんが、それはひしひしと強く伝わってきます。そして逆に唯一クラブから言われていることは全員に出場機会を与えること。今年はこれまでで一番多い23人の選手を抱えています。全員に出場機会を提供しながら、県1部リーグで結果を出さなければいけない。毎週戦う相手は県内の猛者達(しかも一個上)。簡単な試合など一つもありません。想像するだけでため息がでるような作業です。勿論クラブが言う、全員が出場するようにというのには僕も賛成です。なぜなら彼らはまだ中学生、育成年代の選手達だから。サッカー選手は公式戦で成長します。語弊を覚悟して言いますが、練習ではサッカー選手は成長しません。練習試合もダメです。サッカー選手にとって唯一の肥しは公式戦での出場時間。そして、育成年代の選手は公式戦に出場することが義務です。勿論プロの世界はそうではありません。彼らは練習することが義務で、その対価として給料をもらっています。「俺たちは試合でのプレーに対してお金をもらっているんじゃない。日々の練習への取り組みに対して給料をもらっているんだぞ。」とメンディリバル監督(エイバル)が選手達にしばしば説いていたのを思い出します。ただ育成年代の選手とはいえ定規で引いたようにみんなで出場時間を分けようなんてことはできませんし、そんなの理想論です。ユートピアです。というかそもそもそれが正義だとも思いません。なぜならサッカーは弱肉強食だからです。14、15歳にもなればそんなサッカーの厳しい側面も学ばなければいけません。特に競技力の高い団体であればあるほど。自分が身を置くダノクというクラブはある意味プロになる選手達の登竜門のような場所。何もせず試合に出たければより競技レベルの低いクラブに移籍すればいいわけです。「ここには競争に勝った選手だけが居続けることができる」そういった環境を作ることもこのクラブで働く指導者には求められます。そんな弱肉強食システムを身を以て体験させる作業は本当に心が痛みますがやらなければいけません。それがこのクラブで指導するということです。同時にチームに対する帰属意識や仲間を想う気持ちや空気を作り上げていかなければいけないのですから「サッカーをするって難しいな」と思います。そんな厳しい側面の中に、出場時間を提供するという裏テーマにも同時に取り組むことが育成年代の指導者の義務です。これが本当に難しい。なぜならまずはチームとして結果出すことを優先しながらの作業だからです。

夏のシーズン立ち上げは24人でスタートしました。そんな中、2人が他クラブへレンタル移籍をし22人で開幕を迎えます。これでもかなり多いなと頭を悩ませていたところにクラブから新しい選手を更に獲得したと言われて、23人になりました。冗談なのかと苦笑いしていた自分に「今このタイミングで取らないと他に取られてしまうんだ」と僕に説く上司。育成年代の選手の目利きに長け、クラブを支えてきた人物です。立場も経験も、そして何より見る観点が異なる彼と一緒に試合を見ると色々な発見があって面白いです。さて、毎週の試合には18人を連れていくことができます。つまり、23名の内5名が毎週リストから外れることになります。また試合中許される交代枠の数は5枚。つまり交代カードを全て切ったとしても2人が出場時間を得られないまま週末を終えることになります。合計7人の選手が週明けストレスが溜まった状態で月曜日の練習を迎えます。そのストレスの溜まり具合はなかなかのものです。なぜなら彼らは他のクラブに行けば全試合出場を約束された中心メンバーとして活動できるのですから。自分に自信を持っている選手しかいません。

 

マルセロ・ビエルサ監督が言います。「チャンスを与えるのは簡単。チャンスを与えてそこで活躍させることが難しい」と。その為には前回の記事内容とも関連しますがまず何より抱える23人のレベルとタイプを熟知していなくてはいけません。それを知った状態で、彼らの一週間を通じた心の状態やトレーニングに対する姿勢をまずはしっかりと見ます。ここで少しでも油断をしている者はアウトです。体調を崩し気味ででも試合に出たいから練習にきている選手もある程度わかります。これらの「選考」でピックアップされた選手中から誰をスタメンで出すのかを決めていきます。ここでヒントをくれるのは週末の試合の存在です。相手のレベル・タイプ・サッカー場のサイズ・天気・相手のシステム・中心選手のポジションetc様々なものが誰にチャンスを与えるのかを教えてくれます。だからこそ僕は育成年代の指導者でも相手チームの情報を持っておくべきだと思います。例えば、ある相手を3回観た結果、どうやら背後の狙うフォワードがいないな、足の遅いフォワードしかいないな。ということが分かったとします。そんな試合にはセンターバックにコンバートした選手でまだスタメンでの経験が少ない選手にチャンスを与えるのには最適です。出場機会を与える際にはできるだけ成功体験を得られやすい環境を整えて送り出してやることも我々の仕事です。ただこれもあくまで確率の話です。結局最後はその選手を信じて送り出してやれるかどうか。しっかりと心の中でお前ならできると思ってスタメンに選出してやれるかどうか。そしてもしも何かあったら監督である自分が責任をとる覚悟を持っているかも自分に聞かなければいけません。よく試合会場にこんな指導者がいます。自分が送り出した選手に向かって試合中大声で文句を言っている人。「いやいや自分が出したんやん」と突っ込んでしまいたくなります。そうはなりたくない。これらがうまく行くと相乗効果が生まれ最高の空気が生まれます。なぜならチームは結果を出し、且つ控え組も意欲的に活動するから。チーム全体の空気が健康的でしまったものになり、日々の練習での集中力・激しさが増していきます。

現在はまだリーグ序盤。まだまだレギュラー組、控え組をはっきりグループ化されていない猶予期間です。選手には「開幕して間もない今の段階ではチャンスを平等に全員に与え続けているよ」と伝えています。「少なくとも2回はスタメンでプレーするチャンスがあると思ってくれていていい」と具体的な数字をも提示しました。そして「この与えられたチャンスをものにするかどうかは自分たち次第だよ」とも釘を打っています。そしてそろそろそのアピール期間は終わります。待っているのはより厳しい弱肉強食ステージです。ここから色々難しくなってきますね。また報告します。

サッカー指導者

岡崎篤

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