69a66109-6dae-485a-ae74-151ec66155b8

スペインでチームを率いる19-20(9) コロナ危機下でサッカー指導者ができること 2 ~映像分析は僕たちの自己満足!?~

みなさん、こんにちは。先日に続き、目の前にいる選手たちに何ができるのか、について考えていきましょう。

前回の記事では、全体でエクササイズを行った話をしました。そして、それと同時に、グループワークを行い始めたことにも触れました。今回はその報告をしたいと思います。

もう一つの活動:グループワーク

この活動の目的は二つあります。

一つ目。

それは『選手間でコミュニケーションがとれる時間を設ける』というもの。指導者側からの一方的なアプローチではなく、彼らが一緒に作業するような空間・時間を提供したい。

二つ目。

それをサッカーを通して行いたい。あくまで我々はサッカーを通じて繋がっている仲間ですので。そこで『これまで取り組んできた戦術・技術コンセプトの復習』が2つ目の目的です。新しいことを紹介するのではなく、あくまでこれまで身体で覚えてきたことを、思い起こさせたいです。

という訳で、全体を5グループに分けました。それぞれにキャプテン達(主将2人、副主将3人)を配属します。各グループはそのキャプテン主導でビデオ会議を行います。スタッフから与えられた課題を解決していきます。

課題をこなす為に与えられた時間は40分。我々コーチングスタッフは5つのグループが行うビデオ会議に出入りしながら、様子を伺っていきます。時間が経てば今度はそれをスタッフに向けて発表しなければいけません。発表時間は5分間です。

課題の種類はどんなものか?30秒程度の動画を分析してもらいます。例えば、こういったものを。「バイエルン(赤)だけに着目してくれ。この中に、今年俺たちが取り組んだ原理原則が隠れている。幾つ見つけれるかな?最低でも15個はある」と言いながら。

グループからの発表が終わった後は、こちらからフィードバックを行います。ここで初めて、編集した動画を見せます。

そして、最低限見えて欲しかったコンセプトを案内していきます。

サッカーがお勉強にならない為に

フィードバック冒頭では、まずは全体に話しかけます。最低限の基準をクリアしたグループには、労いの言葉を伝えることを忘れてはいけません。そうすることで、力を合わせて仕事をすること、に目を向けさせることができます。

ただ、そのグループの成績を支えているのはあくまで個人。フィードバックの大半は個人に費やすべきです。

これはすごく大事なことだと思います。なぜなら、ここでの目的は「自分が上手くなるための時間」を提供することだから。でないと選手は意欲的に取り組んでくれません。避けないといけないのは、ただのお勉強、で終わってしまうこと。「上手くなる」と「サッカーのお勉強」には大きな違いがあります。

例えば、中盤の選手ミケルに向けて。

僕  :「ミケル!このチアゴのプレーどうよ。まさに今季、お前が課題として取り組んできたプレーやよね。味方がボール奪った瞬間何してる?」

ミケル:「周り見てる」

僕  :「その時の身体の向きはどうなってる?」

ミケル:「開いてる」

僕  :「そうや。彼ができてて、お前ができてないのは何かわかるか?」

ミケル:「・・・」

僕  :「『いつ』それをやってるかや。この瞬間にお前はこれができるか?目の前で味方がボールを奪ったこの瞬間。目をボールからそらせらて向こう側見れるか?そこに価値があるよ。頑張ろう!」

こんな風に発問を通じてやれれば理想です。が、時間は限られています。時には一方的なメッセージになることもあります。例えば、ディエゴという選手へ。

「ディエゴ!このミュラーのプレーどう?お前が目指すタイプの選手やよ。お前のように、オフの引き出しがすごく多い。ほら、味方が判断に応じてどんどん動きを変えられる。これやで!」

いずれにせよ、大事なことは個人にチャンネルを合わせる、ということ。51グループであればその5人全体に話するのではなく、一人一人にアプローチすることが大事です。

なぜなら、僕たちはサッカー評論家を育てたいわけじゃないからです。あくまでサッカーをプレーするのが上手い選手になってほしい。

「サッカーは理解するものではない。感じるもの」という言葉があります。その通りです。極論、サッカーを知らなくても、サッカーが上手くなったらいい。だからこそ、できるだけその選手の感覚に入り込むことが大事です。外からではなく中から話をするんですね。

これ、骨の折れる作業です。でも、これをしないと、サッカーがお勉強と化してしまいます。

そもそも「上手くなりたい」なんて思っていない!?

この外出規制の期間、この手の活動を選手に向けてやられている方、いらっしゃると思います。戦術分析ですよね。どうですか?

映像を通じて選手に何かを伝えたいという活動。やってみて、どんなことを感じられていますか?

これは僕の感想です。これはあくまで僕のチームで感じたことです。僕はこれに限界を感じました。そして、しばらくやって、止めました。なぜなら、雰囲気に「やめろ」と言われたからです。

活動初日はよかった。みんな意欲的に取り組んでくれました。でも、2回目の途中から、選手の顔が曇ってきました。ワクワク感がなくなってきました。義務感が充満し始め、「面倒くさいな」という空気が強くなってきたんですね。そして、3回目のこの活動を終えた段階で、打ち切りました。

なぜこんなことが起こるのか?

その理由はこれ。それは、このグループワークは、選手側の「うまくなりたい」って気持ちに支えられているから。そして、選手は今、上手くなりたい思っていないから、です。

サッカーができなくなって1ヶ月経つ子どもは、上手くなりたい、って思っているでしょうか?いえ、思っていませんよ。今は単に「ボールを蹴りたい!」とだけ思っているはずです。これが育成年代の選手の純粋な姿だと思います。

子ども達が上手くなりたいと強く想うのはプレーしている最中。もしくはその直後です。もうここまでプレーから遠ざかってしまうと、心のそこから上手くなりたいと思えることは難しい。スペイン人心理理学者ペップ・マリが言います。「何かを選手に覚えて欲しかったら?まず感情を掘り起こしましょう」と。感情ない処に学びはありません、ということです。

グループワークで、いくら個人にフォーカスしても、いくらその選手の感覚に入り込もうとしても、その選手の中で「上手くなりたい」って気持ちがなかったら?

それは徐々に、やらなければいけないもの、に変わっていきます。「あぁめんどくさ」と思われます。そうなったらアウトですよね。

何のためにサッカーをしてるのか。何のために練習をしているのか。それはサッカーが楽しいからです。彼らからしたら、その「楽しい」場に、我々がたまたま居た。だから、僕たちは彼らと出会ったわけです。そんな彼らに、僕たちが「面白くないもの」を無理強いすることは許されません。指導者の自己満足になってはいけませんもんね。

という訳で次の作戦に出てみます。「面白い!」と思ってもらうには、どうしたらいいでしょうか。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

サッカー指導者 岡崎篤

Comments