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スペインでチームを率いる19-20 (7) 控え選手へのアプローチ

コロナ問題で活動が停止される前の話です。こんなことがありました。ある選手と話をしている時のこと。その選手が途中で大泣きしてしまいました。僕は一日一人のペースで選手と個人面談をします。練習前に15分ほどでしょうか。今回の彼の場合、同じポジションに4人のライバルがいる上、最近新たに一人加入。ポジション争いが激化し、丁度、心の糸が切れかけている時でした。

どれだけ練習でアピールしてもチャンスがなかなか巡ってこない。やっとチャンスが巡ってきて(試合に出て)も活躍できない。こちらも継続してチャンスを与えてあげることができない。こうやって自分を信じることができなくなってきた時期だったのでしょう。不安がどんどん大きくなっていたんだと思います。

育成年代でよくある「試合に出れない理由」

彼にとって酷な要因があります。それは「身体的成長が周りと比べて遅い」というもの。

小学校まで活躍していた選手が、この時期に一旦伸び悩むことがあります。その主な理由の一つが「周りが自分より早く大きくなる」から。相対的に、パワーとスピードが低下するんですね。サッカーにおいて身体的なパワー・スピードは大事な要素です。それは技術や戦術眼、メンタルと並んで同じくらい大切です。しかし、育成年代に限っては、このパワー・スピードと言う要素は、体の成長に大きく影響されます。

自クラブでは、毎年、これが理由で結構な数の選手がクラブを去ります。クラブの哲学の話になりますが「長い目でその選手を成長させよう」という考えはありません。あくまで「その時、一番旬な選手が欲しい」「一番結果を出せる選手がクラブにはいるべきだ」と言う考えです。ですので、成長の遅い子は基本的に去っていきます。各学年が一番高いレベルのリーグに所属しているので尚更です。おまけに年上と戦わないといけないので。

そんな中、僕の担当学年には身体が小さいのに残留した選手が数名います。彼らはなぜ残ったのか?それは身体的ハンデを差し引いても才能が豊かだから。将来的には誰よりも優秀な選手になる可能性が高い子たちです。でも今はすごーく苦労しています。

こういったケースは皆さんの現場でも良く見かけることなのではないでしょうか。ここで指導者は何をするべきでしょう。もちろん出れないものは出れません。ダメなものはダメです。しかし、育成年代だからこそ、最低限、我々がしなければいけないこともあるはずです。

モチベーションを整える手伝い

その一つは心のケアをサポートしてあげることだと思います。試合に出れていない理由をどれくらいの選手が知っているでしょうか?その理由を自分から聞きにくる選手は多くありません。知らないまま放置されているケースは結構あると思います。本人に考えさせるにも限界があります。時にはこちらから歩み寄っていかなければいけないこともあります。

今回の面談で僕は言いました。「お前は3段階の3つ目でつまづいているんだよ」と。この3段階と言うのはいつもチームに言うことです。一つ目は取り組み。二つ目はトレーニングでのパフォーマンス。三つ目は公式戦でのパフォーマンス。選手が試合に出れない場合、本人はどの段階でつまづいているのか知っておくべきです。「お前は日々の取り組みは申し分ない。練習でのパフォーマンスはチームトップレベル。でも試合がイマイチだ。公式戦でもっと練習でのパフォーマンスに近づけれる様にしないと」と言いました。面談の最後、本人は話してよかったと言いました。なぜなら「自分はどう評価されているかわからなかったからだ」と言います。こうすることで選手は心が整理されます。意外と、これがきっかけでパフォーマンスがぐっと変化するケースってありますよね。

試合で活躍してもらう 1

でもこれだけで終わってはいけません。私たち指導者がするべきことはまだあります。今度はしっかり試合で活躍してもらわないといけません。選手が一番逞しくなるのは公式戦で活躍した時です。試合に出すだけじゃダメです。試合で活躍する為にこちらができる最低限のサポートをするべきです。勿論、それはその選手を起用した自分が責任を負うからというのもあります。クラブ内、チーム内での求心力にも影響してきます。

試合で活躍してもらう為に何ができるのか。ここでも、まずは、心のケアだと思います。まだまだ育成年代の選手たちですから、精神的に不安定です。特に自信がないタイミングでは尚更。相手を必要以上に強く見てしまうことがあります。これが原因で本来のチカラの半分も発揮できずに出番が終わってしまうこともあります。育成年代では特にそう言った選手にどうアプローチするかは大事です。

何ができるでしょうか。例えば、試合前であれば、その部分を思い出させてあげる。試合中ではあれば、それが原因でミスがあった場合は応援してあげる。表面的にはミスになったとしても、意識面で成長があった場合は、声をかけてやるとか。試合後ではあれば、その部分についてどうだったか本人に質問する、などでしょうか。これが難しいんですよね。なぜなら指導者はチーム全体を見ながら、他のことも沢山考えながら行動しているからです。うっかりある選手のプロジェクトを置きっぱなしにしてしまうことが多々あります。

試合で活躍してもらう 2

そしてもう一つ。これは戦術的な話です。その選手を出場させる場所、タイミングをしっかり選定する、ということ。本人の良さが出やすい状況でその選手を使ってあげると言うことです。その為には戦術的知識と試合勘が必要になって来ます。試合の状況次第で活躍するかどうか大きく変わる時があります。ポジションをちょこっと変えるだけで変わることもあります。

なので結局立ち返る場所はなにか。それは選手のことをしっかりと知らないといけないってことですよね。そしてサッカーを知っていないといけないと言うことになります。以前の記事で選手を知ることをメインで取り上げたことがあったのでリンクを載せておきますね(https://futbola.es/19203/)。よかったらどうぞ。

反省

今回、僕は面談をした選手がここまで張り詰めていることを知りませんでした。なぜならいつも笑顔で楽しそうにサッカーをする子だからです。号泣された時は「ここまで追い込まれていたのか」とびっくりしました。時に、選手が外に見せる顔と心の内は大きく距離があります。それを改めて痛感しました。これが原因で僕は、過去に別のクラブである選手への信頼を大きく失った経験があります。定期的に面談をやっていて救われました。

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