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唯一の存在であるために欠かせないもの 〜Aビルバオ育成部門〜

サッカー界の絶滅種

FCユナイテッド・オブ・マンチェスターというサッカークラブを皆さんご存知ですか?アメリカ人オーナーによって商業化の一途をたどるマンチェスター・ユナイテッドに嫌気がさしたサポーター達が2005年に新たに設立したサッカークラブです。「本物のマンチェスター・ユナイテッドをもう一度作り直そう!」として一念発起した彼らの活動には世界から注目が集まります。

21世紀のプロフットボールにおいて「絶滅した」と言われる存在があるとすればそれは「自分たちのクラブ」でしょう。それは「自分たちの土地の人間だけで世界のトップレベルを目指し続ける」という哲学でしょう。アスレチック・ビルバオはその哲学を今もなお守り抜くといった点で世界のどのプロクラブとも一線を画す存在と言えます。「バスク地方で生まれた選手、もしくはバスク地方で育った選手だけがプレーできるサッカークラブ。」それが彼らの哲学です。

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ここで言うバスク地方というのは現在のスペインとフランスの国境を跨ぐエリアを指していて、スペイン側のバスク州3県とナバーラ県を合わせた4エリア、そしてフランス側のフランス領バスクの3エリアを合わせた計7エリアから構成されます。近年FCバルセロナやRマドリードが獲得に動いている左利きセンターバックのアイメリック・ラポルテ選手(20歳)がフランス国籍を持ちながら同クラブしているのもそれが理由ですね。そんなバスク地方の人口は約300万人。日本で言うと茨城県の人口とほぼ同じです。

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そんな限られた活動範囲の中で、独自の哲学を一度も放棄することなく生き続ける彼らは、86年間一度もスペイン1部リーグから降格したことがありません。それどころか近年の成績にも目を見張るものがあります。国内最大のカップ戦であるスペイン国王杯にこの7年で3度も決勝進出を果たしています。ヨーロッパを舞台に戦うクラブとしても定着してきており、11-12シーズンはUEFAヨーロッパリーグを、そして今季14-15シーズンはUEFAチャンピオンズリーグを戦いました。そんな彼らには国内外から多くのリスペクトが集まります。

 

育成部門の重要性

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このクラブがよい成績を収めたいと願えば願うほど彼らが重要視しなくてはいけない存在があります。それはクラブ内の育成部門です。なぜなら彼らの掲げる哲学はその育成部門とトップチームがよりも直結した状態であることを義務付けるからです。彼らにとって育成部門の仕事は10年後のトップチームの成績を大きく左右するもの。10年後のアスレチック・ビルバオのトップチームメンバーを予想するのは不可能ではありません。下部組織でプレーする選手達の中で特に突出した才能を持つ人材をチェックしていけばいいのですから。「アスレチック・ビルバオは数年後左サイドのアタッカーの人材不足に陥る可能性が高いだろう。」そう話すのは今年まで同クラブ育成部門メソッド部門ディレクターを務めていたエドルタ・ムルア氏。そもそもこういったコメントが出ること自体がまさにアスレチック・ビルバオならではだと言えるでしょう。

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そんな同クラブが如何に育成に力をいれているかは数字を見ても明らかです。年間予算の内でどの程度育成部門に投資をしているか、そのパーセンテージを見てみましょう。スペイン国内でも育成に定評のあるビジャレアルとエスパニョールは総年間予算の約10%を育成部門に投資していると言われています。バスク地方を代表するもう一つのクラブで近年の育成に大きく力をいれるレアル・ソシエダは約12%。そんな中、アスレティック・ビルバオは約16%を育成に投資します。このパーセンテージはスペイン国内で最も高いものです。尚、FCバルセロナ、Rマドリードは5%以下。この2クラブ抱える年間予算は他クラブを大きく引き離す約700億円規模だと言われているので実際の額にするとそれはどのクラブよりも多いものになります。これらの数字からもアスレチック・ビルバオが如何に良い育成部門を抱えることを重視しているかが伺えますね。

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2年前にRSDエスパニョール育成部門ダイレクターに就任し、低迷していた同部門を立て直しを実行しているジョルディ・ラルディン氏がこのように述べています。「我々エスパニョールも将来はトップチームに在籍する殆どの選手がカタルーニャ人であるようなクラブを目指したいと思っています。そういう意味ではアスレティック・ビルバオのようになることが我々の夢だとも言えます。」アスレチック・ビルバオが年間で育成部門への投資額は日本円にして約15億円。Jリーグのいくつものクラブの年間予算を上回る額です。

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彼らのようにユニークな哲学を掲げながら世界を舞台に戦うということは、ある意味自分たち自身に「ユニークな行動」を義務付けることに繋がります。アスレチック・ビルバオ育成部門はこの哲学を守り抜くため他クラブが誰も行っていない魅力的な活動を行っています。次回以降はそれらの取り組みを具体的に紹介していきたいと思います。

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