lezamacartelcampo1

アスレチック・ビルバオ下部組織(2) 〜その方法論〜

アスレチック・ビルバオ下部組織ではあくまで個人の成長に目が向けれらているという話を前回の記事で紹介しました。また、クラブとして各年代の公式戦でタイトルを獲ることを目指すのではなく、そこでの相手のチームの存在や勝利へのプレッシャーを各選手の成長の為に利用するということ紹介してきました。では彼らは一体日々何に取り組んでいるのでしょうか。具体的にどのような方法論でもって選手たちは日々トレーニングをしているのでしょうか。

コンセプトとは?

football-kids-street

 

 

 

 

 

 

彼らは具体的なシステムを学ぶこともなければ、具体的なプレーモデルを作り上げていくこともしません。セットプレーを準備することも勿論ありません。あくまで個の育成を重視します。しかし、サッカー界で「個人の育成」という言葉を強調すると、往々にしてボールを持った時に何ができるか、時には個人のドリブルでの突破力が連想されてしまいます。しかしここでいう個の育成とはあくまでサッカーという究極的な団体スポーツに必要な個人の育成を行うことを指します。チームという複合体の中で選手という単体を育成するということです。そこで彼らはコンセプトというものの獲得に目を向けます。コンセプトとは一体何のか。それは8人制や11人制といった人数に囚われない、そして具体的なシステムやプレーモデルにも囚われないサッカーをプレーする上で必要な普遍的な知識のことを指します。サッカーを集団的にプレーする為に各個人が獲得すべき普遍的知識とでも言いましょうか。言い換えると、彼らアスレチック・ビルバオ下部組織は選手達にサッカーという集団スポーツをシステムやプレーモデルと言った集団的立場から学ばせるのではなくあくまで個人の立場から理解することを促していることです。逆にいうと、コンセプトをしっかり各個人が獲得できれば、何人制のサッカーをしようと、どんなシステムでサッカーをしようとそのチームが集団的に良いプレーをすることができるということですね。先日より紹介している動画ミケル・エチャリの100の言葉も言わばコンセプト集です。エチャリ氏が長い指導者人生で作り上げてきたコンセプトを自身の言葉で100個紹介しています。もしよければご覧になってください。

その獲得方法

lezama

それではアスレチック・ビルバオではどのようにこのコンセプトの獲得が行われているのでしょうか?まず数あるコンセプトは大きく分けて2種類のグループに分けられます(※厳密に2つに区別することは難しい)。それはボールポゼッションにより傾倒したコンセプトとより深み・ダイレクトプレーを行う際に必要なコンセプトです。前者は主に横長のグリッドを利用してトレーニングされ、後者は奥行きのあるグリッドでトレーニングされることが多いでしょう。そして各コンセプトはディフェンディングサード、ミドルサード、アタッキングサードと言った地理的フェーズに分けられてトレーニングされます。そしてボールを持っている時、ボールを持っていない時、そして切り替えの瞬間と言った各モーメントにも区別されながら時間的フェーズに区別されてトレーニングされます。練習計画や各メニューは月単位で作成されます。ある種のコンセプトについては第1週目と第3週目で取り組まれ、その他の異なったコンセプトについて第2週と第4週で取り組まれます。つまりひと月の間に必ず2回は同じコンセプトについて取り組んでいるということですね。

具体的コンセプト

ninoenlezama

では具体的にどんなコンセプトがトレーニングされているのでしょう。ボールポゼッションに関するコンセプトを取り組む場合、ボールを持っている時で言えば、ライン間の連携、パスコースの創出、中央のプレーと外のプレー、短いプレーと長いプレー、外からのフィニッシュ、中からのフィニッシュ、各動きの合わせ方、関わり方等と言ったコンセプトが求められています。またボールを持っていない時では例えばゾーン守備の概念、プレッシャーの向き、ライン間の連携、横の連動、マークの変更、コミュニケーション、クロスの対応etc。切り替えというモーメントでは、ボールを奪った瞬間攻撃の意識そして各動きのコーディネーション。深み・ダイレクトプレーをに関するコンセプトを取り組む場合も同様です。ボールを持っている時では長いボールを届ける為、そしてそのこぼれ球(背後・手前)に対応する為の埋められたゾーンを持つことの重要性とその作り方。またいつスペースにアタックしなければいけないのかそのタイミングを知ること。ダイアゴナルのパスを使う瞬間を知ること。ボールを持っていない時では、ロングボールが届けられない為に必要な行動、また届けられるスペースがある場合におけるキッカーの状態の見極め。またボールが届けられる場所が埋められた状態であるか。空中戦に競る選手とその周辺にいる選手の役割etc。

方法論部門の存在

edorutamuruaenlau

スペインサッカー界でも方法論という言葉が一般化されて久しくなりました。現在では下部組織内に方法論部門を設置するクラブは珍しくなく、プロクラブを中心に列記とした一つの職種として認識されるようになったと言えるでしょう。下部組織内に所属する全ての年代の選手達が一貫して同じ考えの基サッカーを学ぶことが重要視されるにつれ、この部門の需要が発生してきました。特にトップチームに如何に効率良く選手を輩出していくかを重要視するプロクラブの多いスペインにおいて一貫指導の重要性に目が向けられるのは自然な流れだったとも言えます(関連記事)。方法論部門に所属するスタッフはサッカー指導者でありながら自身で担当のチームを抱えることはありません。彼らは下部組織に所属する選手達に何を獲得してもらいたいのかその内容を考案し、各指導者にそれを提示します。アスレチック・ビルバオも古くからこの部門を下部組織に設置しているクラブの一つです。エドルタ・ムルア(※)は昨シーズンまで計8年間同クラブ方法論部門責任者を務めてきた人物で、同クラブに方法論の面から大きな影響を与えた存在として知られています。アスレチック・ビルバオではこのエドルタ・ムルアが考案したトレーニングメニューをU10チームからのユースチーム、そして大人3軍チームまで実践しています。言い換えると各チームの指導者がトレーニングメニューを考案することはないということです。

※エドルタ・ムルア(写真上):元プロサッカー選手。アトレティコ・マドリード(2010-2011)、アスレチック・ビルバオ(2004-2007/2011-2015)で方法論部門責任者を歴任。2015年1月よりチリのCFウニベルシダ・デ・チレの下部組織責任者を務める。

指導者に求められる機能

kuko

ではアスレチック・ビルバオ下部組織に所属する指導者達の役割とはいったい何なのでしょうか?我々指導者にとって練習メニューを考案することは数ある大切な任務の内の一つですよね。それを奪われたら指導する楽しみがなくなるじゃないか。人が作ったメニューで良い練習をするのは難しいぞ。という声も聞こえてきそうです。勿論、クラブによってその方法論部門の裁量の幅には違いがあると言われて、トレーニングメニューは各指導者が作成するクラブも多く存在します。しかしアスレチック・ビルバオ下部組織に限っては各指導者がメニューを考案することはありません。寧ろそれは弊害を無くすために必要だという考えのもと方法論部門が一括してトレーニングを考案しています。なぜなら彼らが各指導者に求めることは、チームとして良いトレーニングを指揮することではなく、各個人の成長に寄り添いフィードバックすることだからです。指導者達は各練習メニューで取り組むべきいくつものコンセプトの中で、各選手達が抱える各課題が如何に獲得されようとしているかを観察します。そして各選手が自身のレベルを更に向上させる為に課題を見つけそれらを克服できるかどうか、その過程に寄り添います。これら一連の作業に寄り添いそしてフィードバックを行うわけですね。これが同クラブ下部組織に所属する指導者に求められることです。そして驚きはトレーニングの指揮は選手達が行うとうこと。選手間で練習前に更衣室でミーティングを行い、各メニューがどんな目的で考案されているのか各自で話し合いいます。練習メニューは複雑なものは存在しません。シンプルで「オープンな」メニューが殆どです。ここでいうオープンなメニューというのは、トレーニングの中で選手達がより多くのコンセプトに出くわすメニューのことを指します。またその種類も多くはありません。小さい頃から同クラブでプレーしているユース年代の選手などは全てのメニューを知り尽くしている選手も存在します。

 

今回はアスレチック・ビルバオ下部組織の方法論ついて紹介してきました。いかがでしたでしょうか。次回は同クラブがどどういった考えに則って指導者を育成しているかについて紹介したいと思います。

Comments