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アスレチック・ビルバオ下部組織(1) 〜全ては個を育成する為に〜

これまでの記事でアスレチック・ビルバオは独特な文化・哲学を持つクラブであるということを紹介してきたかと思います(記事1)。そしてそんな唯一の存在である為に欠かせないものが下部組織だということをも述べてきました(記事2)。今回は具体的にどのような考え方で選手育成が行われているのか紹介したいと思います。

評価の種類は「量的」ではなく「質的」

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同クラブの選手育成の目的はできるだけ多くの選手がトップチームに上がることではありません。各選手がどれだけ自分の中に眠っているものを最大限に開花させることができるかに焦点が当てられています。ですので選手達はいかに各分野における自分自身の限界がどこにあるのかを知り、現在の自分をいかに上回れるかを強いられます。選手を評価する際はあくまで「何ができるか」ではなく、「何かをできるように努力しているか」そして「その為に何をしているか」が求められます。つまり、チームとしても「良いサッカーができたか」「週末の試合に勝ったか」といった目先の現象だけを参考に評価は行わないということです。個人でも「いくつゴールを上げられたか」「良いクロスが上げられたか」「パスコースを作ることができたか」と言った目先の現象だけに目を囚われないということです。なぜならこれらの情報だけでは各選手がいかに前述の目的が達成されているか評価するには不十分な情報だからです。

個の育成に必要な公式戦の存在

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選手が育っていくために公式戦の存在は非常に重要になってきます。より高いレベルの相手と戦うことは学習の質を高めてくれるからですね。アスレチック・ビルバオは年間リーグ戦という長い公式戦の存在を選手が育つ為に利用しています。逆に言うとクラブとして各カテゴリーのタイトルを獲得することは重要だとみなしていません。その一例をユース年代の取り組みから見てましょう。一般的にスペインでは日本と同じようにユースカテゴリーでは16,17,18歳の選手たちがプレーしています。そしてアスレチック・ビルバオも日本の多くのチームと同様にユース年代にAとBの2チームを抱え、Aチームはユース1部リーグ、Bはユース2部リーグでそれぞれプレーしています。しかし、同クラブに所属する18歳達はユースリーグではプレーせず大人3軍(バスコニア)の選手としてスペイン4部リーグを戦います。そしてユースAを構成するのは17歳の選手達、ユースBを構成する選手は16歳の選手達です。つまり彼らは常に自分より年齢の上の相手と日々戦っているわけですね。このことからもクラブが各年代のタイトルを獲ることよりも各選手たちがより成長が期待される環境でプレーすることを優先していることがわかるかと思います。

難易度を上げる為の試合プランニング

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先日同クラブのユースBはアウェーでの地元強豪クラブレイオアのユースAとの試合を戦いました。この日彼らはフィジカルスピード経験で上回る2歳上のチーム相手に大きく苦戦し4-1で完敗します。レイオアは4231システムで非常にインテンシティの高い守備網を敷き、エースであるセンターフォワードを中心に力強いカウンターを仕掛けるチーム。この試合に対してアスレチック・ビルバオユースBが採ったプランニングは試合に勝利するには無謀とも言えるものでした。それは343システムでしっかりボールを握って主導権を握ろうとするもの。つまり相手のエースであるセンターフォワードに16歳のセンターバックは広大なスペースの中で1対1を臨む状況が多くなるということ。彼は自チームが攻撃している時もカウンターに備えよいポジションニングを取り、そして空中戦や地上戦での一対一の攻防に勝利することを強いられます。これも目の前の勝利より選手により選手たちに難易度の高い環境を提供することを優先するが故のプランニングだと言えます。結果、このセンターバックは相手エースに圧倒され、ハットトリックを許します。それでもベンチはシステムを変えることも戦い方を変更することもなく、各選手の抱える課題に対してベンチから発問し続けます。これらの試合プランニングからも如何にアスレチック・ビルバオが公式戦を利用して選手個人を育成しようとしているかがわかるかと思います。

あくまで個人の成長に目を向ける

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彼らのハーフタイムでの会話の内容も独特です。常に選手が主体でミーティングが行われます。選手が試合の問題を抽出しそれに対して選手間で議論します。試合で起こっている問題を抽出できるチカラもサッカー選手にとっては非常に大切な能力だからです。決して指導者が意見したり答えを伝えたりはしません。指導者はあくまでミーティングの司会役でありオリエンテーターに過ぎません。そしてミーティングの内容は如何に各個人が自身の課題に向き合えているかについて問われることもあります。具体的なある個人が今どんな課題を抱えていてその課題克服の為にその試合で何ができていて何ができていないかについて皆で指摘し合うわけですね。また試合中でありながら監督が選手をベンチに呼びつけることがあります。それは多くの場合その選手が自身の課題を克服しようとしておらず大切な公式戦という時間を無駄使いしている時に行われます。アスレチック・ビルバオ下部組織の試合には多くのギャラリーが駆けつけます。そんな中彼らは常に年上の相手と戦うことを強いられているとは言え、プロクラブが街クラブに負けるという恐怖と常に戦います。そういった状況ではどうしても選手たちは自身の課題克服に目をつむり自分が今できるプレーだけをするようになったり、チームの利益より自分の利益を優先してしまったりすることが出てきます。例えば、このレイオアとの試合では日頃は積極的にパスコースを作ってボールを呼び込むシーンでもボールを失う恐怖によってサポートの質が低くなってしまうシーンなどがありました。こういったシーンでは試合中であるにも関わらず指導者がその選手を呼んで発問することがしばしば見かけられます。こういったことからも同クラブの育成哲学が垣間見えるのではないでしょうか。あくまで選手達の戦う相手は自分自身であるわけですね。

 

次回は同クラブ下部組織の具体的な方法論について紹介したいと思います。

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