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フッボラW杯寸評集 〜グループリーグ2日目編〜

ロシア 3-1 エジプト17rusia-egiptoこれまででベストゲームの一つ。とんでもなくレベルの高い試合でした。「入りが悪かった」「中だるみした」「最後落ちた」など90分間で必ず訪れる一定時間の集中力の低下。この試合はエジプトにもそれが訪れた。そしてロシアにはそれがなかった。トップ下17番Golovinは次のスターです。

ポルトガル 1-0 モロッコ18portugal-marruecosモロッコのプレー振りは「美味しいんだけど肉が入ってないすき焼」のようでした。7番ZIYACH、10番BELHANDA、8番EL AHMADI、14番BOUSSOUFA、23番CARCELAと最高の素材を並べ、観るものを魅了するフットボールを繰り広げます。でも最後にゴールと言う一番大事なものが欠けていました。あれだけ外したら流石にサッカーの神にも見捨てられます。ポルトガルは全くの反対でした。そして今日の試合最優秀選手は間違いなく16番ノルディン・アムラバッでしょう。アフリカのイニエスタ。良い状況判断を子ども達が学ぶ為のお手本のような選手です。あとポルトガル左SBGUERREIROもいい選手でした。ポルトガルGKルイ・パトリシオも当たっていましたね。

ウルグアイ 1-0 サウジアラビア19uruguay-arabiasaudi第1戦とは比べものにならない程質の高いプレーを見せたサウジアラビア。ポジショニングがしっかり指導され、何よりもその正確性は大会中屈指であることを示しました。「徹底的なポゼッションが唯一我々が打って出る方法」とは6ヶ月前からチームを率いるピッツィ氏。ただ物凄く単調でした。そして空中戦が余りにもひ弱過ぎました。そして何より勝利に対する貪欲さのようなものを感じることができませんでした。とは言え世代的に4年後にピークがくるサウジアラビアにとって収穫の多い大会になったのではないでしょうか。14番OTAYF、18番SALEM ALDAWSARI、9番HATAN BAHBRIはきっと欧州から関心が寄せられるでしょう。そして隣のベンチに座るのは12年ウルグアイの指揮を採り続けるタバレス監督。ベンチで彼の話を聞く選手の佇まいを見るとそれはもう監督というより自分達のお父さんのような存在に見えます。記者会見での包容力もたまりません。中心選手が円熟を迎えた今回のウルグアイ、良いも悪いも相手に合わせてプレーできる人達です。まだ出せる力の半分の出していないという印象ですね。決勝トーナメントが楽しみで仕方ありません。

イラン 0-1 スペイン20iran-espanaイラン代表がこの大会にかけてきた膨大な労力と時間がはっきりと現れた90分間でした。感動しました。細部まで練り尽くされた準備。考え抜かれたシナリオ。選手達のレベルの高さと全てを捧げるメンタリティ。ケイロス監督のサッカーを敬愛するその姿勢。スペイン代表は心の準備は十分していたでしょうが案の定圧倒されました。「正直もう少しだけウチの選手達が報われても良かったかな」とはケイロス氏。ただ最後勝てなかった理由もやはりディティールでした。監督は続けます「今回のスペインとの真剣勝負でイランという国はまた勉強させてもらえた」と。ポルトガル人監督、そしてイランサッカーの株が上がった日になりました。

デンマーク 1-1 オーストラリア21dinamarca-autralia大会8日目。この日行われる3試合の中では最も注目度の低い試合でした。理由は両チームとも前に世界トップレベルのタレントが抱えていないからです。観てて感じます「ゴールが遠いな」と。試合自体は何か鈍い感じが拭えないんですね。しかしゲームを作る部分では大変見所が多く白熱したゲームになりました。例えばデンマーク。彼らからは相手陣地における「3人目の動き」というコンセプトを学ぶことができます。「縦につけて3人目が顔出してサイドに叩いて、クロス」の教本のようなサッカーを志向します。そしてクロスに詰めるところで迫力不足にならないよう逆サイドのSBが詰めるというディテールも訓練もされていました。なぜならスーパースターC.エリクセン詰めないので笑。その後ろで真面目で優秀な2人DELANEY(8番)とSCHONE(19番)がしっかりこぼれ球に目を光らせていました。ところでそのエリクセンですが2試合連続世界中のサッカーファンを裏切っていますね。あそこまでボールを失ったら勝たなければいけないオーストラリアが試合を優勢に進めるのは当然です。オーストラリアの方は中盤の2人15番Mile JEDINAKと13番Aaron MOOYがワールドレベル。ニュースはこれ。19歳Daniel ARZANI(17番)の才能が垣間見えたということ。

フランス 1-0 ペルー22francia-peru注目の一戦。フランスは出来の悪かった前節オーストラリア戦とは全く異なるタイプの試合を迎えます。前節は自分達で“創ら”なければいけない試合でした。しかし今回はペルーが創る側、そしてフランスはそれを壊して眼前に広がったスペースに畳み掛けて攻撃するタイプのゲーム。自ずとデシャン監督がチョイスするメンバーも変わります。この手の試合はフランスの大好物。ペルーはそんな火の海に飛び込まなばいけないのは知っていながらも、自身のアイデンティティを変えることはできません。ペルーを応援した人は多かったのではないでしょうか。何故なら彼らのフットボールは喜びと情熱に満ち溢れているからです。応援する人々も含めてサッカーに生きる国なんだなと感じずにはいられません。語弊を恐れずにいうとペルーは「古き良き南米サッカー」を今の時代でも表現してくれている唯一のチームです。そして彼らをここまで連れて来たのはその圧倒的なテクニックです。そうでなければ他の南米国のようにもっとインテンシティをあげないといけないのでしょう。是非この路線を変えずとことん自分達のフットボールを追求してほしい。ペルー最高の選手は間違いなく18番CARRILLO。欧州ビッグクラブでのプレーを見てみたいですね。というわけで、これでサウジアラビア、モロッコ、そしてペルーが敗退決定。姿を消すチームはみんな“ポゼッション”チームです。

アルゼンチン 0-3 クロアチア23argentina-croacia

91年ユーゴから独立して建国されたクロアチア史上最強の代表チームですね。試合後Aマドリー監督でアルゼンチン人のシメオネ氏が仲間に宛てたボイスメッセージが世界中に流出します。その中でこんな言葉がありました。「サッカーはサッカー選手のスポーツと言われる。ただそのパーセンテージは90%ではなく60%だ。そして残りのパーセンテージを埋める監督がミスを犯した時、その影響は選手がミスを犯した時よりも大きい」と。

今アルゼンチン代表監督サンパオリ氏が散々に叩かれています。指導者間での世論は「あの守備陣の面子で勇敢なフットボールを目指すこと自体が間違っていたんだ」というもの。

14年ブラジル大会準優勝のアルゼンチン。その時のサッカーは自分達の弱みを上手く消した堅守速攻型のサッカーでした。その翌年15年のコパアメリカ決勝でそのアルゼンチンはスペクタクルなサッカーをするチリ代表に敗退します。その時のチリ代表監督がサンパオリ氏でした。17年アルゼンチン監督に就任したサンパオリはチリでやってたようなサッカーに舵を切ります。つまり一から船を造り直そうとしたわけです。しかし彼がチリ代表監督に就任した時(2012年)にはその“船”はもうできていたということは忘れてはいけないこと。なぜならその殆どのメンバーは2007年ビエルサ監督就任時から一緒に戦っていたからです。今回の件、浪漫を追ったサンパオリが英雄になるか世界中からの批判を受けるかは紙一重のようなところがあったと思います。事実前半はアルゼンチンがゲームを支配していた訳ですし。ただ一つ言えることは、国家斉唱の際の両国の選手達の表情には大きな違いがあったという事。曇りのない決意に満ちたクロアチアの選手達の表情に対し、アルゼンチンの選手達は何かこう怯えたような顔をしていたのが印象的でした。そこでは監督はあの表情を和らげることはできなかったのでしょうか。それとも監督の裁量の範疇を超えた重圧だったのでしょうか。

コスタリカ 2-0 ブラジル24brasil-costaricaネイマールが変わりました。それは怪我の回復が進んだからといったタイプの話ではありません。チームスピリットに関係する部分です。前の試合と比べてもよりプレートプレーの間の休みが少なかったです。より献身的なプレーが多くなりました。髪を短くしてルックスを変えたのも偶然ではないはずです。

前節スイス戦では岩のように動かなかったティティ監督が初めて動きます。ウィリアムを変えてドウラグコスタを投入しマイナーチェンジを。決してウィリアムが悪かったわけではありません。そして大きなチェンジはFWフィルミーノをジェススと共存させたということ。結果より流動的に機能するようになりました。
今回のブラジルは本当に強い。美しさを感じます。なぜならまず各個人の質が圧倒的に高い。言い換えると彼ら個人の中にはフットボールが沢山詰まっているんですね。技術というしなやかさ。正確さというスピード。0コンマ何秒の世界で判断を変え続けられるきめ細かさ。その判断についていくだけの身のこなし。身のこなしの延長線上にある圧倒的なテクニック。激しく緩急を使ったスペースも時間の支配。そして何よりも沢山の修羅場をくぐり抜けてきた者しか得られない強烈なパーソナリティ。最後にここにティティ監督が高い献身性を加えるわけです。結果チームとして非常に完成された集団になります。ブラジル代表に芸術性を感じる所以はそこにあると思います。
コスタリカは本当に良く戦いました。マンオブザマッチはケイロル・ナバスでしょう。

ベルギー 5-2 チュニジア27belgica-tunez拮抗した好ゲームになると予想していた方が多かったのではないでしょうか。実力差以上のスコアになってしまいました。チュニジアはベルギーの守備を崩す良い対策を練ってきていました。両ウィングの背後、そして一人目の裏に抜ける動きを囮に二人目がその空いたスペースを使うなど、5枚で守るベルギーのウィークポイント「マークの受け渡しの複雑さ」を上手く突いてきました。事実チュニジアは前半いくつものチャンスを演出しています。問題はチュニジア自陣でのプレーです。モチベーションが高すぎるのが裏目に出て、過度の興奮状態になっていたんだと思います。ビルドアップでプロレベルの選手らしくないミスを頻発させます。その後のペナルティエリア内での守備もお粗末でした。チュニジアの守備陣をクルマに例えるなら、アザールはF1マシン、ルカクに関してはその馬力は飛行機みたいなもの。おまけに彼らは今日は“当たって”いました。外しません。

ベルギーは選手のクオリティにおいて非常にアンバランスなチームだと言うことがはっきりと見えたと思います。前には世界トップレベルを要していながら後ろが怪しい。特にセンターバックの右ALDERWEIRELDと中央BOYATAがそして何度も言う通り左ウィングカラスコの背後。アザールが「僕たちはまだ優勝候補ではないよ」と言うのは的を得た言葉だと思います。中盤2人WITSELとDE BRUYNEは影のMVPですね。

韓国 1-2 メキシコ28coreadelsur-mexico韓国サッカーが世界のどの位置にいるのかが見えた試合でした。7番ソン・フンミンがまずセンターフォワードでプレーするのを初めて観た人も多かったと思います。素晴らしいです。アジアの誇りです。90分通して彼が世界トップレベルの選手であることを示してくれました。おまけにレフリーにも相手にも文句を言わずプレーにだけ集中するあの姿勢は世界中の子ども達が手本とすべきべきです。29歳で迎える次のW杯では彼はどんなレベルの選手になっているんでしょうか。

試合を決定づけたのは韓国のペナルティエリア内での守備の未熟さでした。手を上げてシュートブロックに入ってしまうところ、数的不利での守備においてボールホルダーの利き足を勘定に入れずにファーストディフェンダーを決定してしまうところ、コースを切らないでアプローチしてしまうところ、飛び込んでしまうところetc。世界との大きな差が見えた1試合でした。

GKチョ・ヒョヌは今日も自身のレベルが世界基準であることを示しました。11番ファン・ヒチャンも本当に楽しみな選手。そして今日のニュースは20歳で国の10番を背負うあのバルサのイ・スンウがデビューしました。辛口ですが「大人のサッカーに子どもが混じって来たと言う印象」です。色んな意味で軽すぎる。ただ一番大事な強烈なパーソナリティはびっくりするほど持っていました。あの年齢であのステージに立つだけでなく、チームを引っ張ろうとしていたその姿勢には本当に驚かされました。今回彼がプレー面で挫折することは今後の韓国サッカーにとって大きな財産になると思います。

最後になりましたが今日はハビエル・エルナンデスの凄さを世界中が思い知らされた日となりました。

ドイツ 2-1 スウェーデン29alemania-sueciaレーブ監督3シャドウストライカーシステムを採用。非常に難しい“演目”です。そして近年ドイツが優先的に育ててきたプロジェクトの縮図のようなもの見えたサッカーでもありました。3人のシャドウには多くの専門性が必要とされます。そして優秀なサイドバックが求められます。まず3人のシャドウにはゴール前でフィニッシュを演出するゲームメイク能力が求められます。そして裏へ抜ける際のトップギアへのチェンジというアスリート的要素も。そして何より求められるのは経験値に裏付けられた高いインテリジェンスです。自分よりボールに近い選手達が下す判断に応じて自分に求められるアクションが変わります。走りながらボール受ける前に1秒間に3回くらいプレーの目的を変えることが求められます。上手くないといけないし、速くないといけないし、賢くないといけない。まさにThomas MUELLERやMarco REUSといった才能が豊かで且つ若い頃からトップレベルの経験をして来たアタッカー達だけに務まるポジションです。そう言う意味ではJulian DRAXLERはまだ物足りませんでしたね。それにしてもこの4年でMUELLERかなり進化してます。持ち前のあのメンタリティでもってこの数年で沢山のものを吸収してきたんだと思います。戦術的引き出しが物凄く多くなりました。ドイツは前節露呈したバランスの悪さは改善されていました。でもRUDYの怪我は大きかった。そしてドイツの新たなリーダーKimmich。最新型サイドバックです。将棋だと香子と金を合わせたような反則のような選手です。23歳であんなに強い頭(ストレス耐性に強い)を持っているのは凄いですね。あとMarco ReusをW杯で観れることがすごく嬉しい。さぁドイツ来そうですね。

日本 2-2 セネガル30japon-senegal「いやいや、今回の日本代表はこれまでで一番頼もしいよ」とは長年日本を追いかける優秀なスペイン指導者の言葉。その理由の一つはスタメンの中に世界で最も厳しいリーグで長年戦っている選手が多いと言うこと。事実この試合、中心となって日本を引っ張ってくれたのはその選手達でした。日本のレベルは間違いなく上がっていると感じました。

前節ポーランドと戦った時のセネガルと今回セネガル、メンバーは一人しか違わないのに全く違うチームに見えました。なぜでしょうか?それは日本が自分の土俵にセネガルを引きずり込んだからです。今回のピッチに立った選手達のタイプからして、如何にボールを握って戦うか鍵であったことは明らかでした。しかし「言うは易し行うは難し」で中々わかっていてもできないものです。ただ今日の試合、誰一人逃げ出すことなく勇敢にパスコースを作り、ボールを握ろうとしました。相手をどんどん動かして有効なスペースを攻略することができました。ディフェンスラインからボールを失わず前進しようとすることは大切なことでした。それは「(相手に)来てもらって奥を使う」からです。「長いプレーの為に短いプレーを使う」と言うことです。長谷部選手が最終ラインに入って柴崎選手降りてくる。相手がそれに食いついて空いたスペースを乾選手や大迫選手が使いました。ただ奥行きを失ってはダメです。また中ばかりで外を忘れてはいけません。そういう意味では両サイドバックの存在は重要でした。幅をとって中にスペースを作りながら、タイミングよく裏に抜けることで奥行きも与えてくれました。
個人レベルでいうとまずは香川選手。状況やタイミングを見失わない目とボールを正確に届けるられる技術力は圧倒的レベルでした。そして長谷部選手。後ろからチーム舵取りをしチームが前進すると同時に直ぐさまライニングし次のフェーズに備える。守備面では一番プレー強度が高かった選手でもありました。大迫選手は「相手ゴールに背を向けながらでもゲームメイクってできるんだよ」と教えてくれました。柴崎選手も良かった。ただ何より。我らがINUIやってくれました!イェーイ!

ポーランド 0-3 コロンビア32polonia-colombiaコロンビア優勝候補でしょうか?本当に感動しました。「前節、日本には神風が吹いたんだな」とも思いました。それくらい圧巻の戦いぶりでした。

まずCUADRADOがいるチームは一人多い状態でサッカーができることがわかりました。とてつもないパーソナリティをエンジンに攻守においてワールドレベルで貢献。運動量、今大会No. 1です。この手のプレーは日本人のメンタリティにも合っていて日本が世界に輸出できるポジションです。そう言う意味ではその最上級レベルが彼だと思います。

ペケルマン監督は「トップ下を2人ピッチに並べてチームを機能させる方法」を教えてくれました。そのQUINTEROは夏以降の欧州サッカーを引っ張る存在になることがはっきりと見えました。調子がまだ良くない今のJAMESを遥かに凌ぐ存在でした。ただそのハメスも持ち前の視野の“長さ”でもって「3バック相手はこうやって崩すんだよ」と世界中の指導者に教えてくれました。

そしてFALAO。この試合の裏テーマは「9番合戦」。世界的トップレベルにある9番型FW、ファルカオとレバンドスキー。この試合では明らかになったのは引き出しの数が比べものにならない程ファルカオの方が多いというもの。子ども達には手にとって読んでもらいたい教科書のようなFWです。そんなファルカオが世界で最も優秀な9番になり、国民的英雄になってからもう10年が経とうとしています。そして今日やっとW杯でゴールを決めました。ゴールの瞬間の仲間の喜び方は沢山の意味を含んだものでした。コロンビアの国の人々はどんな気持ちであのシーンを見ていたのでしょう。感慨深いです。

 

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