J12 LPM-LEV1

アイデンティティを体現してくれる監督を待つカナリア諸島

「もう6試合連続で負けていますが、まだあなたに何かできることはありますか?」「あなたはこのウニオン・ディポルティーボ・ラスパルマスを率いるに値する能力を持っていると思っていますか?」そんな弓矢の様な質問を試合後の記者会見で受けるのは監督パコ・アイェスタラン。今季途中ヴィッセル神戸の監督候補に名前が挙がっていたスペイン人監督として日本でも名が知られた監督です。最終的にはラス・パルマスからのオファーを受けた彼は同トップチームの立て直しを任されます。しかしながら、現在直近6戦6敗。非常に厳しい状態で、ほぼ間違いなく近日中に更迭が発表されることになると言われています。J12 LPM-LEV2このラスパルマスが位置するカナリア諸島は地理的には“よりアフリカに”位置します。その地域から輩出される選手は特別な選手が多いです。何より突出したテクニックが一番の特徴でしょう。そして負の特徴も忘れてはいけません。それはピッチ上で働くという行為を苦手とするということ。それは守備におけるプレーリズムの低下を招く一番の原因になります。昨年まで指揮をとっていたキケ・セティエンは負の特徴を徹底的にテクニックを押し出すフットボールを強調することでうまく隠すことに成功しました。あの観るものすべてを魅了するフットボールでリーガに旋風を巻き起こしたのは記憶に新しいところではないでしょうか。J12 LPM-LEV3さて今年はどうかというと少し模様が違います。現在指揮を執るパコ・アイェスタランはキケ・セティエンとは全く異なるタイプの指導者です。ラファ・ベニテスの元で11年フィジカルコーチを務めた経験をもつパコが持つサッカー哲学はもっと“守備的な”ものです。より攻守のバランスを重視する人に見えます。もちろん今のラスパルマスが表現しようとしているサッカーは昨年と大きく変わりません。ボールを握り試合をコントロールしようとします。しかし、何か違います。マイボール時にアドバンテージを創出するのが苦手な選手がピッチに数人立っている時点で昨年よりも保守的に見えます。これは結果的にチームに深みを持たせなくなっていきます。レバンテが自分たちよりも20パーセント以上のポゼッションをしたラスパルマスよりも多くシュートを打ったという事実からもそれが伺えます。相手ゴールに迫る回数が減ったことだけでなく相手ゴールに迫る際の人数も少なくなりました。4231の2の中盤はより後ろで傍観することが多くなりました。結果的により少人数でのコンビネーションが多くなります。それでも技術の高い選手達はレバンテの選手達にボールを触らせません。J12 LPM-LEV5バランスをとろうとするとチームが小さくまとまってしまうことがことがあります。厚みのある魅力ある攻撃と徹底したポジションバランス、この2つの時には背反する要素を同時に得ようとすることが結果的にフットボールが貧しくなります。試合後は白いハンカチを振る人々による大ブーイングが鳴り止みませんでした。カナリア諸島の人たちは昨年まで見ていた自分たちのアイデンティティをそのままフットボールにしたようなチームが見たいのでしょう。その為には行き過ぎたほどの、狂気のような哲学でもってそのサッカーを心から後押ししてくれる監督が不可欠です。町のアイデンティティ、それを体現する選手、そして同じメンタリティを持った監督が揃うことの重要性を改めて感じました。

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